でんさい(電子記録債権)とは
でんさい(電子記録債権)は全銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)が扱っている手形に代わる電子決済手段です。
全銀電子債権ネットワークは電子記録債権法に基づく電子債権記録機関として一般社団法人全国銀行協会の100%子会社として設立され平成25年2月にサービスの提供を開始しました。銀行の信頼・安心のネットワークを基盤として電子記録債権を記録・流通させる新たな社会インフラを全国的規模で提供し中小企業金融をはじめとした金融の円滑化・効率化を図ることにより、わが国経済の活性化に貢献します。
※引用先:会社概要/でんさいネット
でんさい(電子記録債権)は手形や指名債権(売掛債権等)の問題点を克服した新たな金銭債権です。
手形とでんさいの特徴・比較
手形 |
作成・交付・保管にコストがかかる |
紛失・盗難リスクがある |
分割しての利用は不可 |
でんさい(電子記録債権) |
電子データ送受信等による発生・譲渡 |
記録機関の記録原簿で管理される |
分割して利用できる |
売掛債権とでんさいの特徴・比較
売掛債権 |
二重譲渡のリスクがある |
譲渡の対抗要件を具備するために債務者に通知等が必要 |
人的抗弁を対抗されるリスクがある |
でんさい(電子記録債権) |
電子記録により債権の存在・帰属が可視化 |
記録原簿により債権の存在・帰属は明確であるため通知等は不要 |
原則として人的抗弁は切断される |
でんさいはあくまで手形・売掛債権の問題点を克服した新たな金銭債権であり手形・売掛債権を電子化したものではありません。
お時間がある時に下記のyoutubeをご覧いただけると理解できると思います。
でんさい(電子記録債権)には手形や売掛債権という括りはなく、まとめて電子手形(電手)と表現します。
電子手形を活用し手形や売掛債権を譲渡することで早期資金化が可能です。
また従来の手形では不可能だった分割でも利用できます。
分割した一部は譲渡して利用、残りは割引で支払期日前に利用するなどが可能です。
それから支払期日になれば支払企業の銀行口座から受取企業の銀行口座へ自動的に送金されます。
また、でんさい(電子記録債権)の制度設計は手形と似た仕組みになっています。
手形は裏書人が原則として遡求義務を負うように、でんさい(電子記録債権)も譲渡時には譲渡人の保証(保証記録)がセットになっています。
譲受人が譲渡人の保証を要しない場合は保証記録なしで譲渡することも可能です。
また、手形は不渡りでの取引停止処分制度があるように、でんさい(電子記録債権)でも同様の制度が整備されています。
でんさい(電子記録債権)のメリット
支払い企業(債務者)
事務の負担が軽減
でんさい(電子記録債権)はペーパーレスのため手形の発行作業や処理を簡略化でき確認や集計に手間がかかりません。
コストを削減
手形の振り出しにかかる費用や印紙代、搬送コストなどを削減できます。
支払い手段の一本化
手形・振込みなどを一本化することで効率化が図れます。
受取企業(債権者)
紛失・盗難のリスクを回避
持ち運ぶことがなくなるため紛失や盗難のリスクが減少します。また保管・管理のコストも削減できます。
分割利用可・譲渡が容易になる
でんさいでは受け取った電子手形を必要な分だけ分割して譲渡したり、割引を利用することが可能です。
割引はでんさいネットが行うわけではなく、金融機関等が行う業務になるのでそちらに問い合わせることになります。
取立て手続き・回収が容易に
でんさいによる支払いは口座間送金決済が原則となっています。
支払期日になると自動的に送金されるため、取立て手続きなどは一切不要です。
また、でんさいネットは1ヶ月先まで予約請求(発生・譲渡・分割)が可能なため、受け取り企業は債務者がでんさいの支払い予約や金額、期日を確認することができます。
資金繰りに有効活用できる
受け取り企業はでんさいの支払い期日から資金を利用できます。
ただ、入金時間は債務者の資金準備状況や金融機関によって異なります。
また、期日まで待たずとも手形のように金融機関に譲渡することででんさいの割引を行うことができます。
もちろん審査があるので必ず利用できるとは限りません。
でんさい(電子記録債権)のデメリット
でんさい導入により考えられるデメリットを紹介します。
取引先企業の協力が必要不可欠
まず、でんさいネットを利用できる環境を整備して金融機関に申し込む必要があります。
もちろん取引先企業にもでんさいネットを利用できる環境が必要です。
会計・事務処理の変更
でんさいを途中で導入すると会計処理が変わるので管理体制が整うまで一時的に混乱するかもしれません。
勘定科目も電子記録債権として譲渡した際に電子記録債権売却損として会計処理を行うことになるなど電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い(実務報告第27号)を基に会計士や税理士と相談して取り扱うことが求められます。
普及しきれていない
でんさいネットの利用・普及状況は平成27年12月末の時点で全国の企業数の1割である43万社です。
利用企業も取扱額も着実に増えてはいるものの利用企業の数に対し、でんさい発生記録請求件数が少ないことから利用登録だけ済ませて実際には利用していない企業が多いとも記載されています。
先にも述べたようにでんさいでの決済は債務者・債権者・譲受人それぞれがでんさいを導入していないと活用できないのででんさい発生記録請求件数が少ないのでしょう。
【まとめ】でんさい(電子記録債権)
でんさいのメリットは様々な面でリスクやコストの削減になり資金繰りに困っている中小企業が流用資金を有効に活用できます。