ABL(動産・債権担保融資)について
ABL(アセット・ベースト・レンディング)とは企業と金融機関が互いの信頼関係に基づいて密接なコミュニケーションを取りながら、企業が保有する在庫(商品・原材料)や機械設備、売掛債権などを担保にすることで融資を受けれるサービスです。
ABLは「動産・債権担保融資」や「売掛債権担保融資」などとも呼ばれます。
平成23年度の財務省「法人企業統計調査」による日本企業の保有資産状況は、
在庫・機械設備・売掛債権の合計が297兆円
土地が186兆円
との調査結果が報告されています。
上記を見るとわかると思いますが明らかに動産・売掛債権の合計金額のほうが多いのに融資は不動産担保が中心で、動産・売掛債権は担保として活用されていません。
そこでファクタリングと財務ソリューションの1つとして挙げられているのが、ABL(動産・債権担保融資)です。
従来の融資では不動産を担保にする必要がありました。
しかし、ABLなら企業の事業価値を構成する在庫(商品・原材料)や機械設備、売掛金などの資産を担保にすることができます。
ここで疑問に感じるのは、
「在庫や設備を担保に取り上げれたら商売できないのでは…?」ということです。
ABLでは企業が事業を継続することを大前提とした融資で通常の企業活動の範囲では担保となった在庫販売や材料の加工、設備の使用は可能です。
所有権は貸主(金融機関)に移りますが事業に支障は出ません。
また売掛金は借主(企業)が自ら回収し運転資金として活用できます。
ABL(動産・債権担保融資)の特徴
ABLの大きな特徴は、
在庫や機械設備、売掛債権も担保として評価される
これまでの融資に必要だった不動産がなくとも担保の範囲が広がったので多くの企業が融資を受けれる。
貸主(金融機関)とのコミュニケーションが活性化し、事業・業績について深い理解が得られる
貸主(金融機関)に担保の状況や業績に関する情報を報告することが必須になるため事業や業績の理解を得られると同時に信頼関係の強化に繋がる。
適宜、経営に関する助言も提供してもらえる。
上記がABLの大きな特徴です。
ただABLは不動産担保融資より資産を評価するのに時間を要するというデメリットがあります。
ABL(動産・債権担保融資)の契約タイプ
ABLの契約には3つの種類があります。
✓2社間契約
1社の金融機関が行う融資。
✓シンジケートローン
複数の金融機関が協調して共同融資する。
✓保証協会付きABL
ABL保証(流動資産担保融資保証制度)と呼ばれる、中小企業・小規模事業者が不動産担保に依存しない保証への取り組みとして信用保証協会がABLを実行する際に保証してくれる制度です。
ABL(動産・債権担保融資)に向いている企業
- 在庫や信用度の高い取引先の売掛金などの流動資産を保有している
- 不動産が少ないまたは無いが機械設備などの固定資産を保有している
- 時期によって仕入れ量や在庫の販売量に差が出やすい
- 在庫や売掛金の残高について正確にデータを管理している
- 貸主(金融機関)に事業内容を深く理解してもらい、信頼関係を強化したい
などが挙げられており当てはまる項目が多いほどABLには向いています。
ABL(動産・債権担保融資)とファクタリングの違い
ABLについて理解ができたところで企業が保有する売掛金を資金化するファクタリングとの違いを紹介します。
✓融資か売却か
最も異なる点はABL(流動・債権担保融資)は言葉の通り融資であるのに対しファクタリングは売掛債権の売却による資金調達ということです。
✓審査の対象
ABLは融資なので申込者の与信が最も重視されます。
もし売掛債権を担保にするなら取引先企業も審査対象になります。
それから業績が悪化していたり税金を滞納していると融資を受けるのは厳しいです。
またABLでは担保とする流動資産の保全度合いや信用リスクに応じて金利が設定されます。
ファクタリングは取引先企業の信用度が高ければ問題なく利用できます。
申込者が債務超過や税金未納などの問題を抱えていても売掛債権があり取引先企業の信用度が高ければ基本的に大丈夫です。
またファクタリングは金利ではなく手数料が発生しますが一般的には1%~20%です。
✓調達可能金額
ABL(流動・債権担保融資)は申込者の与信や担保とする資産、業績に対する貸主(金融機関)の審査評価によって融資額は変化します。
一方、ファクタリングは申込者が保有している売掛金以上の資金調達はできません。
✓資金調達までにかかる時間
ABL(流動・債権担保融資)は担保にする資産の評価に長い時間を要するので通常の融資よりも時間がかかります。
その点、ファクタリングは最短で即日、遅くとも2~3日で資金調達できます。
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ABLとファクタリング、簡単に比較しただけでも異なる点が多くあります。
どちらもメリットとデメリットがあるので自社の信用度や資産、調達したい額、調達までにかかる時間など利用する企業の状況に合わせてABLもしくはファクタリングを活用してください。